初めて洗濯機を買った

2月から人生初の一人暮らしを始めた。

初めはお金をあまり使いたくなく、洗濯機を買わずに近くのコインランドリーを往復していた。

ただ、一回で洗濯400円 乾燥200円かかっていたことと、洗濯と乾燥が終わったものを取りに行くためにコインランドリーとアパートを往復するのがつらく、ついに洗濯機を買ってしまった。

49,570円 想定外の出費だった。

洗濯機を買うことくらい想定しておくべきなのに、俺はいつも自分の出費を甘く見積もっている。

近くのドラッグストアに行き、その場でマイべ◯トでランキング1位のジェルボールと柔軟剤を買い両手に二つを持ちながらアパートに戻った。

洗濯機の説明書を読む。

人生で洗濯機を動かしたことは一度もなかった。洗濯はいままでずっと母にやってもらっていた。動かし方は何も知らない。

どうやら洗濯機を動かすためには洗濯機に繋げられている蛇口をひねっておかないといけないらしい。洗濯機が水を出していない間はどうなるんだろうか。水圧でどこか壊れるんじゃないか。そんな簡単なこともわかっていなかった。

プニプニのジェルボールを洗濯機の底に置き、溜まっていた衣服を放り込んだ。柔軟剤も少し溢しつつ引き出しに流し込んだ。7kgまで洗える洗濯機らしいが、思っていたよりすぐにいっぱいになってしまった。このいっぱいの状態が7kgに達しているのか分からなかったが、ミチミチに詰めるのも怖かったのでひとまずこれで動かすことにした。

説明書を読み、とりあえず一番無難そうなメニューを選び、動かしてみた。

洗濯機がヴィーン ヴィーンと音を鳴らしながら動き始めた。実家で聞いていた音と同じだった。初めて母と同じ目線でこの音を聞けた気がした。

洗濯機のフタは透明だったので中身が見えた。ワイシャツの上にジョボジョボと水がかかっていく様を見て、大丈夫だろうかと心配になった(何を心配しているのかは自分でもよく分からなかった)。

洗濯機の勝手を知らないのでちゃんと動いているから分からず心配で、5分ほど様子を眺めていたが、すぐに飽きて部屋に戻った。

実家で聞いていたので知っていたが、洗濯機の音はうるさかった。暴力的なくらいの打撃音を発していて、隣の部屋に響いていないか心配になったが、今まで他の部屋の洗濯機の音が聞こえてきたことはなかったので、まあ大丈夫かと思うことにした。

50分後、洗濯機がピーピー鳴り洗濯の終了を知らせて来た。とりあえずフタを開けて、水分で縮まりきった洗濯物を取り出した。洗濯物は、思っているほど濡れていなかった。洗濯終了直後の洗濯物はもっとビチャビチャなのかと思っていたが、多分、遠心力でぶん回して水分を除いてくれたようだった。でも、こんなに洗濯物に洗剤の匂いが付いて大丈夫か心配になった。乾けば気にならなくなるのか疑問だった。

洗濯物を一つひとつニトリで買ったハンガーにかけていく作業は思っていたより手間だった。洗濯機とベランダの間に距離があり、洗濯カゴもなかったため、何度も洗濯機とベランダを往復した。要領が悪い。

天気は快晴だった。

物干し竿にかけたハンガー同士の距離を出来るだけ空けて、乾きやすいようにした。

一通り洗濯物をセットできた。この日は暖かかったため、網戸のまま、iPadで絵を描きはじめた。

ベランダを見ると太陽に照らされた洗濯物が、風に揺れていた。

よく乾きそうだなと思った。